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遷延性意識障害

遷延性意識障害1級の事案において加害者側の施設介護主張を排斥し自宅介護の必要性,相当性が認められた例。

将来介護費用は家族介護につき日額8000円,職業介護利用日につき日額2万円の高額な水準が認容された。

■遷延性意識障害(判例032)
■後遺障害等級:1級1号 確定年:2015年 和解
■東京地方裁判所管轄内

被害者データ 68歳 ・女性 (専業主婦)
女性 受傷時68歳 専業主婦
被告自動車が青信号に従い発進し,同交差点を直進通過しようとしたところ,交差点出口の横断歩道上において,もともと青点滅信号時に横断歩行を開始していた原告に衝突したもの。
遷延性意識障害1級1号

認められた主な損害費目

付添看護料

約230万円

休業損害

約360万円

逸失利益

約1,070万円

将来介護費用

約7,880万円

住宅改造費用

約470万円

成年後見人報酬費用

約320万円

成年後見監督人報酬費用

約180万円

介護機器費用

約470万円

介護雑費等

約490万円

傷害慰謝料

約450万円

後遺障害慰謝料

約2,800万円

その他

約4,740万円

損害額

約1億9,460万円

過失30%控除後

約1億3,620万円

既払金控除(任意保険及び労災)

-約3,950万円

自賠責保険金控除

-3,743万円

近親者慰謝料

約350万円

*1調整金

約2,670万円

*2最終金額

約8,950万円

*1調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当
*2自賠責保険金3743万円を加えた総獲得額は約1億2690万円である。

詳細

加害者の主張

①原告は青点滅信号で横断歩道を歩行開始した過失に加えて,信号が赤に変わった後センターライン附近で立ち止まるべきだったにも拘わらず立ち止まらなかった過失もある。したがって,原告は赤信号で横断開始したものと同視できるから,50%の過失相殺をすべきである。
②原告は遷延性意識障害のため重篤な状態であり,一方で主に介護に携わる同居の息子は日中就労しており介護負担を負わせるには無理があるから,自宅介護は困難であり,施設での介護を前提に将来介護費を算定すべきである。
③原告は事故当時高齢で,しかもうつ病に罹患していたのだから,家事従事能力はなかったと考えられる。よって主婦としての休業損害及び逸失利益は発生しない。

裁判所の判断

①原告が青点滅信号で横断開始した事情を踏まえ,過失相殺は30%とする。なお,事故現場交差点には安全地帯が設けられておらず,原告にセンターライン附近で立ち止まる義務までは認められないことから,30%を超える過失相殺は認めない。
②原告は現に退院後在宅介護に移行しており,その在宅介護に必要な住宅改修を実施し,同居の息子(主たる介護者)はホームヘルパーの資格を取得するなど準備を進め,現状在宅介護が順調に続いていることを踏まえると,原告の将来介護についてはやはり在宅介護を前提に費用を算定すべきである。原告の将来の在宅介護費用は,家族介護料日額8000円,職業介護人を依頼する日については日額2万円が相当である。
③原告が事故当時高齢でうつ病を患っていたからと言って,家事従事能力が一切なかったとは言えない。したがって一定の休業損害及び逸失利益の発生を認める。

当事務所のコメント/ポイント

本件の最大の争点は,遷延性意識障害1級障害を負った被害者を自宅で介護することが可能か否かである。相手側からは「症状が重篤である上,主として介護に携わる同居の子は日中仕事に就いており,自宅介護は困難である」との主張がなされたが,現に自宅の改修など十分な準備をした上で実際に被害者が在宅介護へ移行しており,同居の子もホームヘルパーの資格を取得して介護に参加している実態を踏まえ,自宅介護の必要性及び相当性を強く主張した結果,被害者の将来介護は在宅で行うことが相当との裁判所判断を勝ち取った。
さらに,病状が重篤な被害者に対する介護負担の大きさを詳細に主張した結果,将来介護費用は,後遺障害1級として高額な基準(家族介護料日額8000円,職業介護人を依頼する日については日額2万円)により計約7880万円も認められた。
また過失相殺についても,相手側の50%相殺主張に対し,事故現場に安全地帯が設置されていない事実等を適切に指摘し,最終的な過失相殺率を30%まで下げさせた。
さらに被害者がうつ病の既往歴がある点を指摘する相手側主張に対しては,事故当時既に順調に回復していた点を反論した結果,無事に休業損害及び逸失利益も認定されるに至った。
以上の主張立証活動が奏効した結果,総取得額は過失相殺30%ながら,自賠責保険金を併せて約1億2690万円に到達することができた。

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