事故後減収がない被害者について等級どおりの喪失率35%を認定
異議申立手続きによって併合11級から併合9級を獲得
■後遺障害等級:併合9級 確定年:2017年 和解
■さいたま地方裁判所管轄内
被害者データ
25歳
・男性
(会社員)
男性 会社員 受傷時25歳 症状固定時27歳
被害者が二輪車で右折しようとしたところ,対向直進自動車に衝突された
併合9級(排泄障害10級相当,膝関節機能障害12級,胸腹部醜状痕12級)
認められた主な損害費目
入院付添費 |
約235万円 |
---|---|
装具代 |
約165万円 |
休業損害 |
約200万円 |
傷害慰謝料 |
340万円 |
逸失利益 |
約3,800万円 |
後遺障害慰謝料 |
750万円 |
その他 |
約170万円 |
損害額 |
約5,660万円 |
過失相殺10%控除後 |
約5,090万円 |
任意保険金控除 |
-約450万円 |
自賠責保険金控除 |
-616万円 |
障害年金控除 |
-210万円 |
調整金 |
約1,150万円 |
最終金額 |
約4,950万円 |
*1)調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当
*2)自賠責保険金616万円を加えて,総額約5,560万円を獲得した。
詳細
加害者の主張
① 被害者は,症状固定前2年以上の期間に渡って泌尿器科を受診しておらず,自賠責保険が10級相当と判断したような排泄障害が残存しているとは到底認められない。排泄障害は被害者の自己申告に過ぎず,一切の医学的な裏付けのない主張である。よって,被害者の後遺障害は,排泄障害10級を除いた併合11級にとどまるものである。
② 本件事故後,被害者の収入は減少しておらず,労働能力喪失率は併合11級相当20%から,更に大幅に減じられるべきである。
③ 被害者には,時速15㎞以上の速度超過があったから,その過失は25%を下回らない。
裁判所の判断
① 退院後の被害者の症状を最も的確に把握し得る立場にあった医師によって作成された医証はこれを信用することができるから,同医証に基づき排泄障害10級を認定した自賠責保険の判断も妥当である。よって,被害者の後遺障害は,自賠責保険認定どおり,併合9級とする。
② 被害者には事故後に減収が生じていない。しかし,①主任・係長への昇進が見込めなくなったこと,②右手指のしびれはパソコン業務を困難にさせ,頻尿によって頻繁にトイレ休憩を強いられるなど,業務への支障が顕著なこと,③現実に数回の転職を余儀なくされていることなどを考慮すると,後遺障害等級どおり35%(9級基準)の労働能力喪失率を認める。
③ 加害者が交差点の内側をショートカット右折したこと,他方,被害者にも速度超過があったことを考慮し,被害者の過失を10%とする。
当事務所のコメント/ポイント
① 後遺障害を争われるケース
本件被害者は,当事務所に依頼にきた当初,排泄障害の等級認定を受けていなかった。そのため,当事務所において等級認定をサポートし,異議申立を行った結果,併合9級を獲得することができた。自賠責保険において適切な後遺障害が認定されなかった場合,交通事故に精通した弁護士とともに,異議申立を行うことが必要な場合も多いのが現状である。
また,本件のように,加害者から、後遺障害の存在そのものを争われるケースも多い。しかし,被害者の症状を最も身近で確認している主治医から適切な医学的意見を導き出し,それを代理人弁護士が後遺障害として適切に構成・評価し直すことによって,加害者のそのような主張を排斥することが可能である。
② 事故後減収がないケース
本件被害者のように事故後に減収が生じていないケースでは,加害者から将来の減収損害(逸失利益)が発生していないという争われ方をするケースが多い。しかし,本件がそうであったように,実際には,後遺障害による就労上・実生活上の支障は顕著であり,被害者自身の不断の努力と職場の配慮があって綱渡り状態で就労していることが多い。そのような場合には,その支障や本人の努力などを丁寧に立証することによって,等級どおりの喪失率(本件では9級35%)を認めさせることが可能である。