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コンピュータ制御の高額義足(約360万円)の購入費用を認めた事例

高額義足費用を認定しつつ労働能力喪失率100%を認定

■上下肢切断・機能障害他(判例046)
■後遺障害等級:併合2級 確定年:2019年 和解
■大阪地方裁判所管轄内

被害者データ 36歳 ・女性 (会社員)
女性 会社員(事故時36歳、症状固定時38歳)
駐車中の自車後方に佇立していた被害者に脇見運転の車が衝突した事故
併合2級(右下肢切断4級,左下肢廃用8級,左下肢短縮10級等)

認められた主な損害費目

治療費

約2,600万円

入院付添費等

約480万円

傷害慰謝料

380万円

休業損害

約1,000万円

逸失利益

約8,100万円

将来義足費用

約4,070万円

後遺障害慰謝料

2,400万円

その他

約250万円

損害額

約1億9,280万円

任意保険金控除

-約3,630万円

自賠責保険金控除

-2,590万円

*1)調整金

約3,940万円

最終金額

1億7,000万円

*1)調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当
*2)自賠責保険金2,590万円を加えて,総額約1億9,590万円を獲得した。

詳細

加害者の主張

①被害者は,自車を脱輪させた後,夜間という危険な時間帯に,停止車両の後方という後続車が接近してくる危険な場所に佇立していたのであるから,被害者にも15%の過失が認められる。

②被害者が購入した義足は,内臓されたマイクロプロセッサーにより,リアルタイムで義足の動きを制御する機能を備えたものであるが,そのような過剰に高額な費用が賠償の対象とされるべきではない。

③被害者は,上記②のような高額な義足を購入した結果,路面環境を気にせずにあらゆる歩行速度にも対応可能となっている。よって,仮に高額義足費用が認められるのであれば,100%(2級相当)の労働能力を喪失しているとは言えない。

裁判所の判断

①自車を脱輪させた上に後方に佇立していた点について仮に被害者に多少の落ち度があったとしても,対向車線の停止車両に気を取られて脇見運転をしていた加害者の著しい前方不注視を考慮すれば,本件で過失相殺を行うべきではない。

②確かに被害者の義足は一般的な義足より高額であるが,被害者の側に「損害が高額となることを避けるため,通常の義足より高機能高性能の義足を購入することを差し控えるべき義務」があったとはいえない。よって,義足費用につき,被害者請求額を認める。

③被害者の職種はネイチャーガイドであり,両下肢に切断を含む重度の後遺障害が残存したことを考慮すれば,およそ就労は不可能になったというべきで,高性能な義足を購入することで相当程度歩行が可能なことを如何に加味しても,労働能力喪失率は100%である。

【当事務所のコメント/ポイント】

①過失相殺を否定

本件被害者は,乗っていた自身の車が脱輪したため,路上に車を駐車させ,その車の後方で工具を取り出そうとしているところに,後方から加害車両に衝突された。
加害者は,被害者が脱輪させた点,夜間で見通しの悪い車道上に佇立していた点をもって過失相殺を主張した。
しかし,被害者は,自車のハザードランプを適切に点灯させて後続車両に危険を知らせた上で,脱輪に対処するために工具を取り出すという車両の運転手として尽くすべき義務を果たしていたに過ぎないから,そもそも被害者が責められるべき点に乏しかった。これに対し,加害者は,対向車線にも存在していた停止車両に気を取られ,数十メートルに渡る脇見運転をした結果,前方に止まっている被害車両の存在にすら気がつかずに被害者に衝突した。
本件では,このような両者を比較したとき,過失相殺を行うことが相当ではないと判断された。歩道上ではなく車道上の歩行者ながら,その過失をゼロにした点に意義がある。

②高額義足費用について

被害者は,リアルタイムでコンピュータ制御された高機能高性能の義足を購入しており,1回の購入額が約360万円と高額であった。そのため,そのような高機能高性能な義足を購入する必要性や,通常よりも高額な義足費用を加害者に負わせることの妥当性が争点となった。
本件の場合,右の切断肢のみならず,左下肢にも重度の後遺障害が残存していた。そのような両下肢に障害を抱える被害者にとって,高性能の義足がなければ,歩行すらままならならず,医師の診断に基づいて購入したものであったから,購入の必要性・相当性が認められた。

③労働能力喪失率について

併合2級の標準的な労働能力喪失率は100%である。また,下肢切断4級の点だけをとっても,4級の標準的な労働能力喪失率は92%である。
しかし,本件被害者の高額で高性能な義足の場合,コンピュータ制御によってバランスを取っているから,膝折れの危険性が低く,動く歩道や段差の移動,場合によっては早歩き程度まで可能なものであった。このような高額な義足費用を請求する場合,その反面として,通常義足を着用した被害者と比較したとき,健常者に近い動きも可能となるから,労働能力喪失率(逸失利益)の観点からはかえって裁判で不利になり得る。
とは言え,そのような義足をもってしても,階段の上り下りは決して容易ではなく,健常者とはほど遠いのが現実であった。その上,被害者は,北海道の大自然でネイチャーガイドをしていたところ,ネイチャーガイドは参加者の安全を確保しながら整備されていない道なき道も歩かなければならない職業であるから,例え高性能な義足を如何に着用しようとも,事故前の仕事に復帰することは到底叶わなかった。
このように,被害者の職業と,両下肢の重度後遺障害の密接な関連性を立証し,高額義足費用が認められながら,同時に100%の労働能力喪失率も獲得することに成功した。