高次脳2級高齢女性、自宅介護の必要性が争点となるもこれが認められた事案
在宅介護の必要性を争われるも在宅介護を希望する近親者の心情、患者自身の希望が尊重されるべきであるとの当方主張が採用された事案
■後遺障害等級:2級 確定年:2012年和解
■山形地方裁判所管内
被害者データ 
77歳
・女性 
(主婦)
受傷時77歳・症状固定78歳・女性(主婦)
信号機のない交差点を横断歩行中の被害者に加害車両が衝突したもの
高次脳機能障害2級
認められた主な損害費目
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 休業損害  | 
 約300万円  | 
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 逸失利益  | 
 約1,450万円  | 
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 傷害慰謝料  | 
 約250万円  | 
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 後遺障害慰謝料  | 
 約2,370万円  | 
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 介護住宅費用  | 
 約1,100万円  | 
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 将来介護費用  | 
 約5,000万円  | 
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 介護関係費用(器具・雑費等)  | 
 約880万円  | 
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 その他  | 
 約90万円  | 
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 損害総額  | 
 約1億1,440万円  | 
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 過失相殺(25%)  | 
 -約2,860万円  | 
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 損害填補(任意)  | 
 -約2,630万円  | 
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 近親者固有慰謝料  | 
 約100万円  | 
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 調整金(※1)  | 
 約650万円  | 
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 和解金額  | 
 約6,700万円  | 
  ※1遅延損害金、弁護士費用等を含む 
 ※2上記和解成立後に獲得した人身傷害保険金約2,860万円をあわせると、総額では約9,560万円での解決となった。
詳細
加害者の主張
①医師が在宅生活は困難と指摘していること、社会情勢に照らしても、施設介護の方が充実したサービスを受けられること、在宅介護を選択した場合に生じる介護費用の増額が数千万円にも及び、経済的にも不合理であること、などとして、本件は在宅介護が適切か疑問であると主張した。
②職業介護人を付けなければ、近親者が仕事を辞めなければならないとの被害者側の主張に対して、そうであるならば施設介護を選択べきであると主張した。
③被害者は在宅介護のために自宅を新築しているが、在宅介護に費用な"改築"の限度でのみ賠償が認められるべきであり、最大でも570万円程度にとどまると主張した。
裁判所の判断
当方からは、住宅介護、職業介護人の必要性について、裁判実務としても「在宅介護を希望する近親者の心情に対する配慮や患者自身の生活の質の確保」を重視し、被害者らの希望を最大限尊重する傾向にあることを指摘し、事故以前と同様に「自宅で共に過ごしたい」という意思があり、実際上も、在宅介護を実施する蓋然性(非常に高い可能性)がある以上は、在宅介護を相当と認めるべきであることを主張した。また、医師の在宅生活が困難とは、近親者一人での看護では困難という趣旨でしかなく、その困難性の解消のためにも職業介護人が必要であると主張した。
その結果、裁判所和解案でも、本件において住宅介護を認めるという判断を前提に、住宅改造費用としては約1,100万円(加害者主張の倍近い金額)が認定され、将来介護費用としても約5,000万円が認定された。
当事務所のコメント
今回、加害者が指摘したように施設に入所して介護を行う場合と、自宅介護との場合では、将来の介護のためにかかる費用は大幅な差があることから、裁判上も、加害者側は在宅介護は不要であるとして激しく争ってくることが少なくありません。
しかしながら、"ノーマライゼーション"(障害者か否かを問わず、すべての人が望むところに住み、望むように社会活動に参加できる社会こそが通常(ノーマル)であるとする考え方)の理念に照らせば、経済的に比較して費用が大幅に増加するからと言って、被害者ご本人やご家族が事故以前には当たり前のように選択できた「自宅でともに過ごす」という希望が否定されなければならないという理由にはなりません。このことを、本件でも丁寧に主張し、裁判所も当事務所の主張を認めて、自宅介護を前提とした損害額を認定しました。
他方で、単に希望しているだけでは必ずしも自宅介護にかかる費用が認められるというものではなく、実際に自宅での介護体制を整えていることなどをしっかりと立証していくことが必要となります。当事務所では、自宅改造を含めた住宅介護の事案を数多く支えてきた実績がありますので、訴訟での立証の観点も含めて被害者家族の方々を支援していくことができます。


