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高次脳機能障害

高次脳1級男児につき職業介護人利用の必要性が認められ将来付添費日額1万5,000円、住宅改造費1,900万円が認められた裁判例

・6歳男児自転車の交差点での出合い頭事故について加害者は55%の過失相殺を主張したが事故状況の立証により過失相殺率を15%に留めた例
・住宅改造費について本件の工事は事故に遭わなければ不要で家族の利便性も顕著に向上したとは言えないとして改造費用全額の賠償を認め損益相殺を許さなかった裁判例
・在宅付添費(症状固定前)につき加害者は6歳児童の身の回りの世話と大差はないとして争うも事故前の6歳児の世話と事故後の付添いは本質的に異なるとして日額8,000円を認めた裁判例〈管轄〉

■高次脳機能障害(判例136)
■後遺障害等級:1級 確定年:2014年判決
■千葉地方裁判所管内

被害者データ 6歳 ・男児
受傷時6歳・固定時11歳 男性
信号機のない丁字交差点内で、直進しようした優先側加害車両が
突当り路から出てきた被害自転車を見落として出合い頭衝突させた
高次脳機能障害1級,両目視力低下9級 自賠等級1級

認められた主な損害費目

在宅付添費(症状固定まで)

約500万円

将来付添費

約1億600万円

住宅改造費

約1,900万円

介護器具・車両費用等

約850万円

逸失利益

約6,800万円

傷害慰謝料

約450万円

後遺障害慰謝料

約2,800万円

その他

約1,100万円

損害総額

25,000万円

過失相殺(15%)

-約3,750万円

損害填補(自賠責)

-約4,000万円

損害填補(人身傷害保険過失填補後)(※2)

-約6,250万円

近親者固有損害

約700万円

弁護士費用

約1,500万円

遅延損害金(※1)

約1億1,700万円

総合計額

23,500万円

  ※1事故発生から賠償までに約9年半の期間が経過したことによる遅延損害金
各保険金を受領するごとに遅延損害金に保険金を優先充当しているが上記では簡便のため受領時期ごとの計算を省略して遅延損害金額として計上している
※2訴外獲得の人身傷害保険金約1億円は、まずは自己過失分(15%:約3,750万円)に充当される。損害元本から差し引かれるのはその余である約6,250万円となる。
※3訴外獲得の人身傷害保険金約1億円、自賠責保険金約4,000万円を合わせて、総額で約3億7,500万円での解決となった。

詳細

加害者の主張

①症状固定までの在宅付添費について、6歳児にはそもそも身の回りの世話が必要であり、事故前の状況と大きく変わりはないなどと主張して、付添費用を争った。
②症状固定後の将来介護費用は、母親の体調不良も改善傾向にあり被害児童の世話ができないわけではなく、日中は親元を離れて特別支援学校に通って社会生活を営んでいるので、身の回りの動作すべてについて介助を必要として24時間付添いをしなければならない状態ではないなどと主張し、将来介護費用は日額8,000円であると主張した。
③自宅改修工事のうち車いすの専用玄関の屋根は不要であり、それ以外についても家族の利便性も向上しているのだから損益相殺をすべきであると主張した。
④加害車両側が優先道路であり、かつ被害自転車が飛び出した過失は大きいとして55%の過失相殺を主張した。

裁判所の判断

①当方からは、被害者の後遺障害の程度、在宅に移行後の状況について主張立証を行った結果、裁判所においても、事故前の6歳児の世話と事故後に必要となった介助は本質的には異なるものであるとして、症状固定までに関して日額8,000円の在宅付添費を認めた。
②将来の介護体制について、日常生活の身の回りの動作(食事やトイレ、車いすへの移乗など)について介助が必要となっている状況や、記憶力の問題、問題解決能力が小学生低学年程度にとどまっていることといった精神系統の障害の内容・程度に関してご両親からの聴取内容だけではなく、特別支援学校の教師からの聴取を行った結果などの証拠に基づいて緻密に主張し、身の回りの動作のほぼすべてについて常に介助が必要であることを立証した。また、母親の体調面が優れていないことなども丁寧に主張したところ、裁判所においても、加害者側の職業介護不要との主張を斥け、日額1万5,000円、総額1億円以上の将来介護料を認めた。
③上記のように多くの面で介護が必要となっている状況を立証し、住宅改修の必要性を丁寧に主張した結果、裁判所も、その全額について事故に遭わなければ必要なかった工事であり、いずれも必要なものであると認定し、当該工事によって家族らの生活面での利便性は顕著に向上はしていないとして、加害者主張を全面的に排斥し、損益相殺を否定し、1,900万円もの高額な住宅改造費を認めた。
④当方からは刑事記録に基づき、優先道路とは言っても現場となった道路は歩車道の区別もなく、周辺には住宅や店舗が立ち並んでいる住宅街で道幅も広くない生活道路であったとして、被害者側の過失は軽減されるということ、また飛び出しとの主張に対しては、出合い頭事故は見通しが悪いがゆえに生じている以上、これを特に被害者の不利な事情とすべきではないこと、まだ当時は6歳であったことを主張立証した結果、裁判所は判決において、過失相殺率は15%にとどめるとの認定をした。

当事務所のコメント

本件は介護を行ってきた母親の体調面にも不安があり将来的にはより職業介護に頼る可能性が高まることが考えられる事案でした。当事務所は多くの高次脳機能障害の方の将来介護費用の賠償を支えてきた経験があります。しっかりとご家族による介護の状況や、ご本人の障害の内容・程度とそれに対して必要となる介護の内容を立証したことで、本件でも高額な介護費用や住宅改修費用を獲得することができました。
住宅改修費用は、確かに全面的なリフォームや新築をした場合には、そもそも費用全額ではなく必要な範囲に賠償額は限定されます。また介護のためのリフォームであっても同時に家族の利便性が向上している場合には、その割合によって賠償範囲が限定(損益相殺)されることもあります。しかしながら、すべての事案でそういった限定が妥当なわけではなく、具体的な工事の内容と必要な介護の状況を立証したことで、本件では改修費用の全額を賠償の範囲とする判決を得ることができました。

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