被害者日常生活動作自立を理由とする加害者側の5級主張を排斥し,自賠責同様被害者に高次脳機能障害3級を認定させた事例
高次脳機能障害3級としては高額な将来介護費用約3,300万円(母親67歳まで日額4,000円,それ以降日額6,000円)が認められた。
■後遺障害等級:3級3号 確定年:2017年 判決
■さいたま地方裁判所管轄内
被害者データ
17歳
・男性
(高校生)
男性 受傷時17歳 高校生
道路横断中の原告自転車が,走行してきた被告自動車に衝突された。
脳外傷による高次脳機能障害3級3号
認められた主な損害費目
治療関係費 |
約880万円 |
---|---|
付添看護料 |
約440万円 |
逸失利益 |
約8,350万円 |
将来介護費用 |
約3,300万円 |
傷害慰謝料 |
約400万円 |
後遺障害慰謝料 |
約1,990万円 |
その他 |
約80万円 |
損害額 |
約1億5,440万円 |
過失50%控除後 |
約7,720万円 |
既払い保険金(任意)等控除 |
-約1,140万円 |
自賠責保険金相当額控除 |
-2,219万円 |
近親者慰謝料 |
約100万円 |
弁護士費用 |
約520万円 |
遅延損害金 |
約1,590万円 |
*最終金額 |
約6,570万円 |
*自賠責保険金2,219万円を加えた総獲得額は約8,790万円である。
詳細
加害者の主張
① 原告は1人でリハビリテーションセンターへ通所して生活支援を受けており,一通りの日常生活動作を自身で行うことが可能であるから,原告の高次脳機能障害は実際には5級相当である。
② 原告の高次脳機能障害は①のとおりであるから,将来介護費用は最大でも日額2,000円での算定が相当である。
裁判所の判断
① 被告の主張を前提としても,原告は高次脳機能障害のため,自ら金銭管理等を行うことはできず,対人関係にも問題があり,また(脳損傷の影響で)手の震えのため細かな事務作業を行うこともできない。このような原告が,単純作業を含め,一般就労することは困難であるから,原告の高次脳機能障害は5級ではなく3級相当である。
② 原告は高次脳機能障害のため,日常生活全般にわたり周囲による見守り声掛けが必須である。したがって,将来介護費用は母親67歳まで日額4,000円,それ以降日額6,000円を基礎に,約3,300万円を認める。
当事務所のコメント/ポイント
交通事故による高次脳機能障害について,自賠責保険で認定された等級を加害者側弁護士が争ってくる事態はしばしば見られるところである。この事例では,自賠責保険による3級の認定に対し,相手側から「原告は事故後リハビリテーションセンターへ一人で通所している。実際の等級はもっと軽く,5級程度である」という反論がなされた。そこで我々において,高次脳機能障害に起因する症状の特徴について丁寧に解説し,被害者の日常における実際の状態を的確に指摘・説明した結果,裁判所も自賠責保険の認定が適正であることを認め,相手側の主張を全面的に排斥した。
また,被害者の高次脳機能障害による精神症状の重さを丁寧に説明し,被害者に対し必要な介護の内容とその負担の大きさについて丁寧に主張した結果,将来介護費用は高次脳3級としては高額な基準(近親者67歳まで日額4,000円,それ以降日額6,000円)の計約3,300万円を勝ち取った。
結果,損害元本額は高次脳3級事案としては高額な約1億5,440万円に達し,過失相殺50%を経ても,自賠責保険金を加えた総額は約8,790万円と十分な金額が残った。